No.4, No.3, No.2, No.1[4件]
オオカミ男とぬりかべちゃん
この作品知ってるひとどれくらいいるんだろうか。かくいう私もジャンプSQを読んでいてたまたま発見してね……(連載中だよ)



なぜかと言われたらうまく言えないんだが作者の既婚者感すごいんだよな。こう……片方だけがグイグイ来るとかじゃなくて、結局お互い優しく大切にしたいって思ってる距離感が……こう……(オタク)
#オオカミ男とぬりかべちゃん
物質的世界でケーキを食べるふたり
※攻殻機動隊SAC/少佐の夢小説(♀主人公)名前変換なし
・主人公♀設定
元軍人
20歳くらい
義体化率は高め
――この場所は、なぜか悲しい感じがする。
新米ながら私がそう思った場所は、公安9課である。所属していた軍からここに配属されたのは一カ月前。別の言い方をするならば、クゼ・ヒデオ率いる出島難民と自衛軍との衝突が終結した直後である。一軍人でしかなかった私の前にある日突然現れた初老の男性――今の課長によると、出島の一件で殉職した新人の後継を探しているとのことだった。
私が入ったタイミングは、9課そのものが変化するタイミングでもあったらしい。両手にも満たない少数精鋭部隊に新人を入れたり、アサルトスーツのデザインが新調されたり。以前は「お喋り」な思考型戦車を導入していたそうなのだが、私はウチコマという無機質なロボットしか知らない。
そんなところに、なぜ"感傷"を感じるのだろう?無論、新人が一人殉職したという事実はあるが、ここのメンバーの殆どは軍人上がりである。無念だと心から惜しむことはあっても、ここに漂う雰囲気とそれは別物に感じた。
だから、根拠はと問われたら、直感だと言うしかないけれど。
9課に漂う悲しい感じ。
その中心には、いつも少佐が居た。
*
「少佐」
淡々としたブリーフィングを終えて解散となったタイミングで、彼女の背中に声を掛ける。
ここに来たばかりの頃、公安警察なのに少佐?と首を傾げたことがある。軍に居た頃からそう呼んでいるのだと、入ったばかりの頃イシカワさんが教えてくれた。
「何?」
「よかったら、コーヒー飲みに行きませんか?好きなお店があって」
バトーさん曰く、彼女は全身義体らしい。しかし、連日深夜まで渡る任務のせいか、流石にその整った顔にも人間らしい疲労が滲んでいるように見えた。
時刻はそろそろ21時を回る。連日に比べれば、早上がりな方だ。
「へえ。お酒じゃなくて?」
こちらを振り返った少佐は、意外そうに眉を下げた。
「はい。寝つきが悪くなるなんてことはないと思います。カフェインなんてすぐ分解できますから。あなたも、私も」
私が笑うと、少佐が溢れるように笑った。彼女がつられて笑うことがあるんだなと、少し意外だった。
私に向き直った少佐が、腰に手を当てて柔らかく目を細める。
「いいわ。ちょうどゆっくりお茶でもしたいところだったの」
「なんだ、こんな夜から二人でサテンか?お前の歓迎会もまだやってねえってのに」
「あ、ええと……」
ドアへ向かう途中だったバトーさんが私達に気づくなりわざとらしく寂しそうに言う。流石に口ごもって飲みに変更するか迷っていると、少佐の楽しげな声が聞こえた。
「今日は男子禁制なの」
「門前払いってか。ったく…少佐はお前がウチに来て、相当嬉しいみたいだぜ」
そう言うバトーさんも楽しそうに笑い、ぽんと私の肩に軽く手を置いて爽やかにブリーフィングルームを出て行った。
*
9課の拠点からそう遠くない場所にある小さな喫茶店は、いつ入っても居心地がいい。軍人になって文字通り目の当たりにしてきた、どこまでも凄惨な出来事も、落ち着いた深い緑色の柔らかなシートに座るとそれらの光景は夢だったように思える。
ボックス席に向かい合って座った私達はホットコーヒーを頼んだ。加えて、私はマスター手製のシフォンケーキも注文する。
「ここのケーキ、クリームが甘すぎなくてすごく美味しいんです」
「そう。魅力的だけれど、私はコーヒーだけにするわ」
注文してほどなく、2つのホットコーヒーと1つのケーキがテーブルに置かれる。
コーヒーの深い香りに、疲れ気味だった少佐の顔が少し綻んだ気がした。
「軍とは違う環境だけれど、どう?少しは慣れた?」
「正直、まだあまり。……脳筋タイプなので。毎日電脳がショートしそうです」
「随分謙虚ね。新人の中では、あなたが一番優秀よ」
「ありがとうございます。…少佐は女性に優しいですね」
「優しい女性が好きなのよ」
彼女は至って穏やかに言い、コーヒーを啜った。
なんだか照れくさくて、私は冗談半分に笑って誤魔化す。軽めのクリームが乗ったシフォンケーキを一口食べたけれど、緊張のせいかあまり味がしない。
そろりと彼女へ視線を向ける。任務ではハンドガンを握る白い指が、ティーカップを優雅に持ち上げている。カップに口を付ける際に自然と伏せられたまつ毛は艷やかで、無機物から形づくられたものとは思えなかった。
同性に恋愛感情を抱いたことはない。今までもこれからも、男性と恋愛をしていくのだと思う。
けれど、彼女の体に触れることが出来る人は、少し羨ましい。
「そのブレスレット、彼からの贈り物?良い趣味してる」
「えっ?」
ふと気付けば、少佐の視線が私の右手首に向けられていた。プラチナの細いシルエットで、中央に飾られた小さなトルマリンは見るたびに違った青色を見せてくれる。
「ああ、いえ……。友人に貰ったんです」
普通に答えたつもりだったが、その時の私は一体どんな顔をしていたのだろう。
少佐は私の顔を見て何かを察したように、静かにカップをソーサーへ置いた。
「……死んだのね」
「……はい」
脳裏に、背の高い黒髪の男性の姿が浮かぶ。友人。彼がもう少し生きてくれていれば、恋人になっていただろう。
誕生日でもクリスマスでもないある日、突然私にこのブレスレットをくれた。前線に立つ日々の中で、いつどこに買いに行ったのだろう、と未だに不思議に思う。もしかしたら、ずっと前に購入していたのかもしれない。
ブレスレットを貰った数日後に、彼は脳殻を撃ち抜かれて死んだ。鬱蒼とした密林から抜けた先に、焼けるような日差しの下バラバラになった脳殻と逞しい四肢が脳裏に過ぎり、すぐに消えた。
「こんな時代に生きてるからなんですかね。彼のゴーストが実はネットにアップロードされていて、ネットを彷徨い続けていたら会えるのかなって…本気で探しに行ったりしてました」
「……無理もないわ」
少佐は視線を伏せたまま静かにコーヒーを啜った。
軍人が殉職するのはなにも珍しいことではない。上司や部下だって失い続けてきたというのに。死んだ人のゴーストがネットに上がっているなんて、電脳の時代を生きる人々の妄想だというのに。それでも、軍のサーバーをハッキングまでして彼を探し続けた。
「…でも、ふと思ったんです。砂だらけの砂漠でもよく通る彼の声とか、日焼けした髪の感触とか、汗をかいたときに感じる義体特有の匂いとか。この物質的な世界で、私と同じ空気を吸って生きてる彼が大好きでした。だから、電子情報だけで出来た彼に会えても、冷めちゃうかもって気付いたんです。……本当は言い聞かせる、に近いですけど」
ぼんやりと呟き、コーヒーカップの黒い水面に映る自分と目があってふと顔を上げる。
喋りすぎた、と焦ったが、少佐は静かに笑っていた。
「あなたが時々悲しそうにしている理由、少し分かった気がする。もちろん、他にも辛い出来事があったのかもしれないけれど」
少佐の言葉に、思わずぽかんと口を開けてしまう。
「…あ、あの…私、そんなふうに思われるほど態度に出してましたか…?」
「いいえ。私のゴーストがそう感じてただけ」
「…そうですか」
「私も最近、好きだった人が死んだの」
「え…?」
急な言葉に思わず顔を上げると、カップを持て余すように軽く回しながら、少佐はあっけらかんとしていた。
「子どもの頃出会った、初恋の人。再会した時は、巨大な妄想家になってた。……フフ、物質的な世界で生きる彼が好き、か。分かる気がするわ」
頬杖をつき窓の外を眺めたまま、彼女は手癖のようにカップの近くに敷かれた小さな紙ナプキンを片手で器用に折っていく。
手持ち無沙汰で触っているだけのように思えた紙ナプキンは、気付けば柔らかな白い折り鶴に変わっていた。
(――あ。)
ふと、合点がいく。9課にある、少佐を中心にした悲しい感じ。9課のメンバーはみんな少佐のことが大好きだ。少佐が悲しいと、9課全体が悲しくなるのだ。
(……仲間。)
その言葉が、ふっと心の中で浮かび上がった。
「そんな顔しないで。全く…トグサとはまた別の若さね」
「す、すみません」
情けない顔をしていただろうかと、はっとして自分の頬を両手で軽く撫でる。
「いいわ。悲しんでくれてありがとう」
少佐が穏やかに告げた言葉に、私は何度か瞬きをした。
「…私、そんなに悲しい顔してましたか?」
「そう見えたけど。確かめるにしても、部下をゴーストハックするのは野暮よね」
少佐がふふっと悪戯っぽく笑う。うまく言えない嬉しさが胸いっぱいに広がって、少し照れくさくて私はコーヒーカップへ視線を落とした。
「…私、今の職場に来れて良かったです」
「急に何?…でも、そうね……私も良かったわ。後輩に感傷的な話をするのも、たまには悪くないかもね」
そうのんびりと溢して、少佐はコーヒーに口を付けた。なんだか妙に安心して、私は殆ど手を付けていなかったケーキを食べる。今度は甘くてほっとする、いつもの味だった。
「やっぱり頼もうかしら。シフォンケーキ」
ふとこちらへ視線を向けた少佐が、優しく微笑む。彼女につられて、私も口元が緩んだ。
20240505
#攻殻機動隊
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